重馬場の秋競馬、イギリス編

先週最後のクラシック・レースが終わり、英国競馬の大きな開催はニューマーケットの二つの開催とアスコットのチャンピオン・シリーズを残すだけとなりました。
9月17日の土曜日は、二つの競馬場で地味なG戦が行われましたので、そのリポート。

最初は、この競馬場唯一のG戦というエア競馬場のファース・オブ・クライド・ステークス Firth Of Clyde S (GⅢ、2歳牝、6ハロン)。馬場は good to soft と重く、1頭が取り消して12頭立て。馬場を克服できるかは未知数ですが、G戦を戦ってきたブレッチリー Bletchley がメンバー中最も成績上位と見て5対2の1番人気。
最低人気(40対1)のエリカ・ビング Erica Bing が逃げましたが、スタートで出遅れた6番人気(11対1)のデレクテイション Delectation が、後方から自信満々の末脚で抜け出し、中団から伸びた7番人気(12対1)のローズブライド Rosebride に2馬身4分の3差を付けて力の違いを見せつけました。1馬身4分の1差で先行していた9番人気(20対1)のベル・ミアード Belle Meade が3着に入り、人気のブレッチリーは後方の儘10着大敗。やはり重馬場は空っ下手だったようです。

ブライアン・スマート厩舎、ポール・マルレナン騎乗のデレクテイションは、前走8月9日にサースクの6ハロン戦でデビュー勝ちしたばかり。メンバー中最も経験が浅い馬ながら、2戦2勝でG戦タイトルを獲得しました。オーナーの関係から今後は未定ですが、この勝ち方でクラシックを狙うという選択肢も出てきたのではないでしょうか。

続いて3鞍のG戦が行われたニューバリー競馬場。最初のアーク・トライアル・ステークス Arc Trial S (GⅢ、3歳上、1マイル3ハロン5ヤード)は、現実的には凱旋門賞とは無関係と見で良いでしょう。こちらも馬場は good to soft と重く、この馬場状態が結果を大きく左右しています。1頭が取り消して5頭立て。エリザベス女王の所有馬でキングジョージ3着のダートマウス Dartmouth が13対8の1番人気。ハードウィック・ステークス(GⅡ)勝のペナルティー5ポンドを背負っていましたが、ここは実力上位でしょう。
4番人気(6対1)のアイラッド Ayrad が逃げ、勝負は3番手を追走していた2頭の闘い。内の本命ダートマウスを、外から2番人気(11対4)のアルゴメーター Algometer が4分の3差し切っての決着となりました。馬場とペナルティーが勝敗の分かれ目だったと言えそうです。2馬身4分の1差で後方から追い込んだ最低人気(15対2)のタシャール Tashaar が3着。

デヴィッド・シムコック厩舎、ジム・クロウリー騎乗のアルゴメーターは、前走ダービー7着以来の休み明けとなった3歳馬。グッドウッドのリステッド戦に勝ってダービーに挑戦し、G戦初勝利言いながらそれに相応しい実力を有していると言えるでしょう。母はドイツのGⅠ馬という背景もあります。
勝ったアルゴメーター、2着惜敗のダートマウス共に次走は海外遠征となりそうです。

次のミル・リーフ・ステークス Mill Reef S (GⅡ、2歳、6ハロン8ヤード)は3頭が取り消して7頭立て。2対1の1番人気に支持されたのは、何故か出走馬中只1頭の未勝利馬ハリー・エンジェル Harry Angel 。いわゆる厩舎情報で評判が買われていたのかもしれません。
6番人気(12対1)アンアベイテッド Unabated の逃げをマークして先行したハリー・エンジェル、残り1ハロンで抜け出すと、5番手から追い込む4番人気(7対1)のパーフェクト・エンジェル Perfect Angel に2馬身半差を付けて見事期待に応えました。エンジェルのワン・ツー・フィニッシュに首差3着したのは、後方から追い込んだ2番人気(3対1)のグローバル・アプローズ Global Applause で、モールコム(GⅢ)3着、ジムクラック(GⅡ)の4着馬です。

前評判通り初勝利をG戦で飾ったハリー・エンジェルは、クライヴ・コックス厩舎、アダム・カービー騎乗。5月7日にアスコットの5ハロン戦でデビューして2着でしたが、その際に他馬に擦られて立て直しに時間が掛かっていたとのこと。コックス師によるとクラシック云々より、来年のコモンウェルス・カップを目指すタイプだ、とのことでした。

イギリス編の最後は短距離のワールド・トロフィー・ステークス World Trophy S (GⅢ、3歳上、5ハロン34ヤード)。当初12頭立てで行われる予定でしたが、馬場を嫌って取り消し馬が続出。結局は半数の6頭が取り消して6頭立てになってしまいました。前年の2着馬で、夏のヨーグでサマー・ステークス(GⅢ)に勝ったリッジ・レンジャー Ridge Ranger が13対8の1番人気。
そのリッジ・レンジャーが逃げ切りを図りましたが、3番手を進んだ2番人気(5対2)のコタイ・グローリー Cotai Glory が本命馬を捉え、2番手を粘る3番人気(9対2)のアルファ・デルフィニ Alpha Delphini の巻き返しを短頭差抑えての優勝。2馬身4分の1差でリッジ・レンジャーは3着に逃げ粘りました。

チャーリー・ヒルズ厩舎、ジョージ・ベイカー騎乗のコタイ・グローリーは、2歳時のモールコム・ステークス(GⅢ)以来となるG戦2勝目。4歳の今期も短距離G戦の常連で、キングズ・スタンド(GⅠ)2着を筆頭にジュライ・カップ、キング・ジョージ・ステークス、ナンソープ・ステークス、フライング・ファイヴとG戦線を戦い続け、8戦目での今期初勝利です。
ヒルズ師は、どちらかと言えば固い馬場を得意とする同馬を重馬場理由に取り消すことも考えたそうですが、他陣営が次々と回避するのを見て、ならばと出走に踏み切った由。あくまでも馬場状態が条件ですが、次はアベイ・ド・ロンシャン賞(GⅠ)を目指すとのことでした。

 

 

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